新米事業主はじめの一歩【記帳入力やる前の準備】

さて、これまで、確定申告までのひととおりの知識をお伝えしてきました。

しかし、年の瀬まであと20日。「習うより慣れろ!」が一番早い。そこで、実際に会計ソフトなどを使って、記帳入力やってみます。

どこの会計ソフトが良いのか?

会計ソフトは初期設定や記録した会計データの移管の手間もあるので、いったん導入したら大きな不都合がない限り使い続ける場合が多いです。このため、新米事業主としては慎重に選択したいところ。

今のクラウド会計(マネーフォワードやFreee、やよい会計オンラインなど)は複式簿記を念頭におきつつも、初心者が特別な知識なく始められるよう各社競って開発しており、無料お試しといったサービスもやっています。新米事業主としては、このサービス向上の恩恵を受けるべく、ぜひ利用したいところですね。

現在、マネーフォーワードがフリープランといって、月15件以内の仕訳であれば無料、というサービスを展開しています。

月15件というのは、月15件登録するということのようで、年間180件以下の取引しかない事業の場合、毎月15件以下の入力登録となるよう入力時期を調整すれば、無料で使えるのかもしれない。

取引数の少ない事業主であれば差支えないかもしれませんが、事業規模を大きくしていきたいとかずっと使い続けることを考えれば、最低限維持のためのコストを年あたり10,000円程度と考えて、制約の少ないプランを選ぶ、ということが良さそうです。実際のところ、日進月歩で利便性の進歩が著しい会計ソフト、マネーフォワードではなくても、各社それぞれに創意工夫しており、ご自分にあったもの見つけて利用する価値はありそうですよ。

入力準備

料理をするのに、材料の下ごしらえをしておくのと同じように、記帳入力する場合も、そのための下準備をしておいたほうが早く容易に進めることができます。

そもそも帳簿記録は、年のはじめから月日ごとに、同じ内容の取引は同じ区分に、支払いや入金の事実が明らかになる証憑(領収書)に基づいている、ことが求められています。

であれば、入力の順番としては、月日ごとや同じ区分ごとに整理された領収書あるいは領収書とともに整備された帳簿に基づいて記録する、ということが早道となります。

これらの入力のための資料、書類の整理を確認しましょう。

帳簿と証憑

1)帳簿

税法での簡易帳簿を以下に示します。

これらは、複式簿記では、補助簿としての機能を持っており、日々の取引を記録するのに役立ちます。

- 現金出納帳: 手元現金の増減、残高を管理する帳簿。

- 売掛帳: 得意先ごとの売掛金残高を示したもの。

- 買掛帳: 仕入先ごとの買掛金残高を示したもの。

- 経費帳: 支払うべき経費を記録したもの

- 固定資産台帳: 固定資産ごとの明細、及びその増加(取得)、減少(除却)、減価償却を記録したもの

これらの帳簿は誰もがすべて作らなければならないものではなく、事業の規模や業種によって作らなくてよいものもあります。しかし、きちんと管理しておかないと自分があとから困る!と、あるいは税務調査のときに説明に困る!といった場合の、困ってしまう内容を管理する帳簿については作らなくてはいけないですね。

たとえば、店舗や事務所で商品やサービスを現金販売するような場合、現金管理はとても重要になります。こうした業種では現金管理出納帳を作成し、手元現金と日々照合するようなきっちりとした管理体制が築いておかないと、もうけの源である現金を紛失してしまうようなことがあっても、気づかないかもしれません。

また、新米事業主が簡易帳簿を作っていなかった!という場合も、別の管理できるような帳票があれば簡易帳簿に代替できるのではないでしょうか。たとえば得意先からの代金回収が請求書発行によって行われている場合、得意先への請求書発行データを内部管理用に利用し、欄外にそれに納品日や入金日をもれなく記入しているのであれば、売上や売掛金の管理のための帳簿的機能は果たしているので、これを利用するということが考えられます。つまり、帳簿の名前というよりも、売上や仕入の取引ごとに、日付、相手先、取引内容、金額が記載され、事業に関する取引を網羅的に記録している明細あるいは一覧であれば、補助帳簿としての機能を果たすわけです。

2)証憑

- 契約書、事業主が発行した請求書控え、納品書控え

- 取引先から入手した請求書、領収書。

領収書は経費としての支払を明らかにする証憑です。小口の金額が多く枚数が増えがちなので、新米事業主にとっては、まずは領収書の整理が一番となります。

領収書整理

1)整理

会計ソフトで入力しやすい現金出納帳入力や預金出納帳入力を利用する場合には、まず現金で支払った領収書か預金口座から支払った領収書かで分け、これを月単位でまとめます。

預金払いかどうかわからない場合は、事業用の預金口座コピーを見て、時期や金額等で該当するものがあるかどうかで判断します。

量にもよりますが、領収書の山の整理案を紹介しましょう。

現金払いか預金払いかに区分>>それぞれ月別に区分>>取引種別に区分

領収書の枚数が少なければ、取引種別にまで区分しなくても、月別の区分までで十分でしょう。

領収書が整理されていれば、入力が容易になるだけではなく、あとから帳簿記録と照合するのも容易になります。

2)保存

この区分された領収書ですが、一般に領収書は小さくサイズが一様でないため、区分した後に紛失する心配があります。

ノートに貼り付ければ安心ですが、結構手間もかかります。

簡単ですが、ホチキスで年月を書いたラベルとともにホチキスで止める、という方法もあります。

そして、それらを月別の封筒や透明なビニール保存バックに入れ、各種帳簿とともに対象年を記載した確定申告の箱に入れておきます。なお、会計ソフトで作成した仕訳帳や元帳の保存期間は7年、それ以外の帳簿や関連資料の保存期間は5年と長いので、これらの重要書類はうっかり捨てることがないよう留意しましょう。

最近では、この領収書についてスキャンする、撮影する、などの電子保存できる道具が多彩になってきており、また、税務上も電子保存できる要件を緩和する等目覚ましい進歩を見せています。まだ一般的にはなってきていないようですが、より便利な機能を持った機器やアプリの開発によって、帳簿記録の負担が軽減されていくことは間違いありません。楽しみですね。

まとめ

● これから新たに会計ソフトを使い始めるのであれば、クラウド会計がわかりやすく、維持コストもそれほどかからない。

 作るべき帳簿は、事業遂行上の管理や税務調査のときの説明資料として機能する記録となるもの。店舗や事務所での現金売上がある場合は、現金管理の面からも現金出納帳を作成するべきである。

● 領収書の区分整理及び保存は、業種にもよるが、現金か預金の支払別や月別にまとめておくと記帳入力が容易で、あとから帳簿記録と照合しやすい。

ようやく記帳入力の手前まで来ましたね。明日は記帳入力です。