新米個人事業主はじめの一歩【今年の所得見込みは?】

さて、開業した今年の記帳入力をやってみて、いかがでしたか?

思ったより簡単、という意見もあると思います。でも、同一取引を2度計上してしまう(二重仕訳)や計上そのものが漏れてしまうような間違いについては、念入りに確認しておくとよいですね。長年やっていても、気を遣うところですから。

そして、一番の関心ごとである「損益」は予想通りでしたか?

おそらく、その数字を見て、多くの方は、個人事業主としての難しさを再度実感することになりますね。数字は正直なのです。でも、自分の姿を鏡に映し出すことで他人からの見え方がわかるように、個人事業主も自分の事業を数字に表して、客観的に自分の事業を見つめることができますね。

今年もあと10日余りとなりました。今日は、現段階で所得見込みが黒字のケースと赤字のケースに分け、それぞれ年内にやっておきたいことをまとめてみます。

所得見込みが黒字のケース

以前説明した所得税計算の仕組みを思い出して下さい。

エの課税所得に税率を乗じて年税額が計算されるので、課税所得が小さいと年税額も小さくなります。そして、課税所得が小さいのは、今年の収入から差し引く「今年の必要経費」、「今年の所得控除」が大きいということです。

そこで、「今年の必要経費」や「今年の所得控除」で計上が漏れてしまっている費用がないか、あるいは年内中に対応しておく項目がないかを点検しておきましょう。

【資産計上している支出について費用化の有無】

1.固定資産固定資産購入の支払いが10万円以上でもアイテム単位でみれば、10万円未満かどうかを確認する。10万円未満であれば、すべて全額必要経費として計上できます。

2.開業費の範囲。開業に関する費用を拾い出し、もれなく集計しているかを確認します。そして、黒字を圧縮するために、どの程度償却(費用化)できるかを考えます。

3. 事務所(店舗)賃貸契約の確認。礼金や権利金は繰延資産であり原則として5年均等償却です。また、敷金の中に返還されない金額があるかどうかを確認し、返還されない金額がある場合は、それも繰延資産となり原則として5年均等償却です。これらの事務所(店舗)賃貸に係る繰延資産が20万円未満であれば、全額その年の必要経費にできます。

【今年の必要経費】

1. 事業用の機器、消耗品の購入。この機会に開業時ではそろえられなかった什器備品や消耗品を購入する。あるいは、年内挨拶廻り品物購入や新年後の広告宣伝費用印刷物などを作ってしまう。

2. 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入する。これは、取引先が倒産してしまった場合に融資を受けられるための共済だが、前納掛け金(上限240万円)は全額必要経費に入れられる。

【今年の所得控除】

所得控除とは、納税者の個人的な事情を勘案して税負担を調整してくれる控除額です。必要経費は収入を得るための経費であり、個人事業主の判断次第だったのに対して、所得控除は個人的な事情に応じて金額がある程度決まるので、恣意的に動かすことが難しいとも言えます。しかし、いくつかの控除については、任意に対応できるものがあります。

1.小規模起業共済に加入する。個人事業主が、廃業や退職時の生活資金のために掛け金を積み立てる制度だが、前納掛け金(上限168万円)は所得控除になる。

2. 寄付金控除。ご存知のようにふるさと納税は所得の上限額があるものの、所得控除となる。このほか、同様に所得の上限額はあるが、国や地方公共団体、公益社団法人等への寄付についても所得控除の対象となる。

いずれも、今年中の対応なので、早めに動いて対応しておきたいですね。

所得見込みが赤字のケース

記帳入力によって赤字であること、赤字の規模がわかったことは、ラッキーでした。今からすぐに売上につながるアクションを考え、来年の年間計画を思い描いてみませんか。

すぐできることは、赤字の原因は何かについて冷静に分析することです。あるいは、第三者や専門家の意見を聞いてみることも大切だと思います。

①開業して日が浅いための認知度不足>>広告宣伝を行う、知らしめていく

ベストな広告宣伝を最初から最短距離、最小コストで見つけるのは難しいので、効果を見ながらいくつかを試していくのがよさそうです。

②サービス内容が顧客ニーズに合致しない>>合致しないサービス内容は何かを見つける

そもそも、顧客ニーズは、地域や場所、年代によって異なりますし、移り変わりやすいものでもあります。これが見つけられるなら、苦労はしません。

でも、すでに同種のサービスを展開してある程度軌道に乗っている人がいるとしたら、その人は顧客ニーズを見つけている、ということにはなりませんか。まずは、マネのできる人を見つける、次にその人のやり方をよく観察する、そして同様に真似てみる、という方法も一つの対策だろうと思います。

まとめ

● 今年の所得見込みが黒字の個人事業主は、早めに動いて今年の必要経費や所得控除になる項目について対応する。

● 今年の所得見込みが赤字の個人事業主は、赤字の原因について分析し、対応アクションを考える。第三者や専門家の意見を聞いてみる。

自分一人でやっていると、自分の行いはなかなか見えずらいものです。考えてみますと、ビジネスとは他者との関わりで繁栄していくもの。たくさんの人から率直な意見をもらって、自分の進む道を選んでいきましょう!