今日は、白色申告青色申告のどちらを問わず個人事業主が関係してくる、税法の収入と経費(仕入及び必要経費)を明らかにします。
事業の収入とは何か
● 事業の収入とは、以下のような事業に関連して生ずる収入をいいます。
- 売上
- 商品の自家消費、商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより支払いを受ける保険金
- 空箱、作業くずの売却代金
- 仕入割引、リベート
- その他経済的利益など
● 1月1日から12月31日までの事業にかかる収入を集計することになりますが、売上の計上タイミングはいつ?
- 商品販売の場合は、商品の引き渡し時。店舗だと、お客様へ品物を渡して代金を受け取りますが、まさにこのときが売上計上のタイミングといえます。
- サービスの提供の場合は、サービス提供完了時。たとえば、美容院の場合は、髪のカットなどのサービスを完了させて代金を受け取りますが、このときが売上計上のタイミングとなります。
たとえば、ネットショップで、12月28日に入金があり、注文を受け付けたけれど、商品の発送が翌年になってしまった場合は、その年の売上ではなく、翌年の売上になります。
このように、収入は何か、そしてそれはいつの年の収入になるかに留意して集計しないと、税務調査では収入計上モレや期ズレを注意深くチェックするので、要注意です。
必要経費に算入できる金額
事業所得の計算上、収入から差し引くことのできる必要経費は、収入に対応する売上原価その他収入を得るための直接要した費用と、その年に発生した販売費及び一般管理費です。
● 売上原価
売上原価とは、売上に対応する商品の原価です。(仕入ではありません!)
商品を仕入れたけれども、売上げていないため期末在庫となった商品は、次年以降の売上に対応する商品の原価となるため、当年の仕入からは除かれます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 仕入 ― 期末商品棚卸高
白色申告であろうと、青色申告であろうと、期末には、実地棚卸を行って、何が在庫として残っているかを棚卸表に記載しなくてはいけないということですね。
● 販売費及び一般管理費その他業務上の費用
給与、賃金、地代、家賃等でその年の12月31日まで債務の確定しているもの及び減価償却費等です。
ここまでは、特に、法人などとの違いは感じないところですが…
個人事業主の場合、家事費や家事関連費の取り扱いが設けられています。個人活動の領域と事業活動との領域を区分することが難しい個人事業主への特別な配慮という感じですね。
∗ 家事費(個人の生活費、所得税、住民税、保険料、罰金、医療費など)
→ 家事費は必要経費に含まれない。
∗ 家事関連費(個人の活動領域と事業の活動領域の両方にまたがるものの支出、具体的には、接待交際費、地代家賃、水道光熱費など)
→ 業務遂行上直接必要であることが明らかである部分について、合理的な按分方法により区分できる場合に、その部分に限って必要経費に入れられることになっています。
個人事業主は、この判断が難しく、また甘めに解釈して区分してしまう可能性が高いので、ここを事業開始時に、しっかりと理解しておきましょう。
家事関連費の合理的な按分方法(家事按分)
まず、新米事業主は、自分が該当する家事関連費には何があるかを把握しておきます。
たとえば、家事関連費としては、接待交際費、自宅兼事務所の地代家賃、水道光熱費、電話・携帯料金、ネットプロバイダ料金、個人と事業用に使用している車のガソリン代、駐車場、減価償却費があります。
一般的な按分方法として知られているものを記載しましたので、参考にしてください。
∗ 接待交際費
領収書の保存と支払った相手と支払った目的。目的については、事業との関連性を明確にしておくことが必要です。
∗ 自宅兼事務所の地代家賃
事務所部分の床面積を事業用部分として按分します。
∗ 水道光熱費
電気料は、営業時間数や作業時間などを事業用部分として按分します。
または自宅兼事務所における全体のコンセント差込口における事務所部分のコンセント口数の按分という方法もあります。
ガスや水道費は、これを事業の用に供することが明らかな業種以外、必要経費に算入するのは難しいようです。
∗ 電話・携帯料金、プロバイダ料金
営業日数や通話時間を事業用部分として按分します。
∗ 自動車関連費
事業用に使用した走行距離を全体の走行距離で按分して事業用の使用割合を計算し、これをガソリン代や保険料、減価償却費について按分します。
まとめ
● 収入の範囲を理解し、売上計上タイミングに留意する
● 収入から差し引く必要経費は、売上原価、収入を得るために直接要した費用、販売費及び一般管理費。
● 商品販売の業種では、仕入が全て経費になるわけではないので、棚卸を実施して売上原価を計算する
● 家事費は必要経費に入れられない。
● 家事関連費は明確に説明できる合理的な按分ルールで按分した部分のみ、必要経費に入れられる。
いずれも、何でも必要経費にしてしまうようなやりすぎは禁物です。個人の税務調査で、質問されやすい箇所でもあるので、十分に対応できるようにしておきましょう。